これまでデジタイゼーション・デジタライゼーション・労務や経理関係のDX記事をブログで掲載してきました。今回はその最終ステップとして、デジタルトランスフォーメーション(DX)の歴史や効果、デジタルシフトの進め方についてご紹介します。
<DXの歴史>
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、私たちのビジネスと生活に大きな変化をもたらすことをコンセプトとして、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授らによって提唱されました。当初、DXは「デジタル技術(IT)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という意味を持っていました。この時点では、デジタルはビジネスにおける主要な要素ではなく、私たちの日常生活を変えるものでした。しかし、3年後の2007年、マイケル・ウェイドらが登場し、DXの考え方に新たな次元を加えました。彼らは、ネットサービスの急速な普及と拡大が背後にある変革の原動力であると指摘し、デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションを提唱しました。デジタル技術の進歩により、産業の仕組みや競争の仕方が急速に変化し、この変化に適応できない組織は、事業継続や企業存続に厳しい課題を抱えることになりました。
そして、DXの歴史はさらに進展し、2018年には経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表しました。このガイドラインでは、企業がデータとデジタル技術を活用(デジタルシフト)し、ビジネス環境の激しい変化に対処する方法が紹介されています。DXは、顧客や社会のニーズに合わせて製品、サービス、ビジネスモデルを変え、業務のやり方、組織のあり方、プロセス、企業文化を変革し、競争上の優位性を築くための重要な要素となっています。
このように社会基盤からビジネス基盤へと変化していきました。
<デジタルトランスフォーメーション(DX)>
DXの歴史を振り返り、次に進むべき方向に焦点を当て、DXの変化についてご紹介してきました。最終ステップのDXはますます進化していき、私たちのビジネスや生活に大きな変化をもたらす段階です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、三つのステップに分かれて進化しています。以前の記事でご紹介していましたが、最初に、第一ステップのデジタイゼーションでは、紙の文書や物理的な状態のものをデジタル化し、情報の保管とアクセスが簡単に出来るようになりました。これにより、データの管理が向上し、業務プロセスが効率化されました。
第二ステップのデジタライゼーションでは、デジタルデータの活用が強調されました。企業はデータを収集して、それを分析し、ビジネスの進め方や計画を考える際に役立てる方法を探しました。これによって、企業はより深い理解を得て、新しいビジネスのアイデアを考えたり、業務の改善を進めたりすることができるようになりました。
そして、最終ステップのDXでは、デジタルトランスフォーメーションが更なる進化と高度化を遂げています。このステップでは、デジタル技術の発展が急速で、デジタルがビジネスの中心となりつつあります。
DXでは、人工知能(AI)や自動化技術の普及が注目されています。AIはデータの高度な分析と予測能力を提供し、業務プロセスの最適化を実現化します。自動化技術によって、日常的なタスクや単純作業が自動的に行われ、従業員はより戦略的な活動に専念できるようになります。
具体的な例を見てみると、カスタマーサポートの分野ではAIチャットボット(文字や音声で会話できるプログラム)が幅広く活用されています。ウェブサイトやアプリ内で質問に迅速に応答し、簡単な問題を効率的に解決する一方で、製品やサービスに関する問題に対してもトラブルシューティングや新機能の案内を行います。顧客の過去の履歴を活用し、パーソナライズされたサポートを提供することで、顧客体験を向上させます。そして、複雑な問題にAIチャットボットが対応できない場合はその問題を人間のエージェントに引き継ぎ、円滑な情報の引継ぎを実現します。これにより、カスタマーサポートがより迅速かつ効果的に提供され、顧客の満足度が向上します。
製造業において、自動化技術は、製造ラインのさまざまな工程で活用されています。たとえば、製品の組み立てでは、ロボットアームや協働ロボットなどの自動化機器が用いられ、人の手による作業を代替しています。また、検査では、画像処理やAIなどの技術を用いて、人の目による検査を自動化しています。
例を見てみると、食品製造の包装工程では、ロボットアームやAIなどを活用して、製品のピッキングや包装などの作業を自動化することで、生産性向上と品質向上を実現しています。包装は、大量の製品を短時間で包装する必要があり、人による作業は負担が大きいため、包装機械の自動化が進んでいます。ロボットアームやAIは、製品のピッキングや包装などの作業を自動化することで、人による作業に比べて生産性と品質が向上します。また、AIを活用することで、製品のサイズや形状などの情報を自動で認識し、最適な包装方法を判断することができます。
このように、製造業においては、自動化技術の活用により、生産性向上や品質向上、コスト削減などの効果が期待されています。今後も、自動化技術の進化とともに、製造業における自動化の取り組みはさらに進んでいくと考えられます。
最終ステップのDXでは、AIと自動化技術が中心になり、ビジネス全体に革命をもたらしています。カスタマーサポートや製造業などでAIの活用により、顧客一人ひとりのニーズや状況に合わせたサービス提供が実現され、企業は競争力を向上させています。
<DXの進め方>
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、現代のビジネスにおいて不可欠な要素となりつつありますが、その進め方には注目すべき重要なポイントが存在します。本来の進め方と、現実におけるDXの進行順序は、しばしば逆転していることが多い様です。DXを成功させるための進め方を一緒に考えてみましょう。
【進めるべき順番】
1. 競争上の優位性を確保
DXの本来の進行順序では、競争上の優位性を最初に考えます。競争上の優位性とは”競合他社よりも有利な状態”のことです。これは、例えば納期を守ることはもちろん、品質を高めること、コストを下げること、新商品の提供をすることなどで他社に対抗できるポイントを見つけ出すことが考えられます。
2. 製品やサービス、ビジネスモデルを変革
その後、競争上の優位性を維持するために、製品やサービス、ビジネスモデルを変革(改良)します。例えば、事務処理のスピードアップ、製造工程の見直し、在庫切れを防ぐための努力、新しい機械の導入、技術力の向上などが含まれます。
3. データとデジタル技術を活用
最後に、競争力を高めるためにデータとデジタル技術を活用し、業務プロセスを見直し、システムを導入します。例えば”受注→生産計画→生産→出荷”のような業務プロセスを効率化し、デジタル技術の恩恵を最大限に受けることがこのステップの目標です。
【逆転したデジタルシフト・DX】
しかし、今の企業が考えるDXプロセスでは、DX化の目的が何かを考えず、本来の進めるべき順番とは逆転し、以下の様になっていることも多いです。
DXと聞くと、多くの企業がまずデジタル技術の導入から始めようとします。政府の補助金が利用できたり、他の会社のテクノロジー導入の成功事例など魅力的な要因が多いため先行しがちになります。
そのデジタル技術に対応するために、ビジネスのやり方や業務プロセスを変えざるを得なくなり、組織内で課題が出てくることがあります。余計な作業やシステム連携で問題が発生する場合もあり、デジタル技術に合わせたビジネスモデルに変える必要が出てきてしまいます。
業務を効率よく遂行し、競争上の優位性を確保するための変革だったはずが、本末転倒になってしまいます。これではDXとは言い難いですね。
本来の進行順序に従い、競争上の優位性を確保するために、業務プロセスを見直し、企業の課題を把握した上で、それを解決するためのデジタル技術を活用することが、DXの成功に向けて極めて重要なステップと言えます。
DXが私たちの仕事や生活にもたらす変化は、まだまだ進行中で、未知の可能性が広がっています。最新のデジタル技術の力を借りて、よりスマートで効率的なビジネスモデルを構築し、顧客とのつながりを深めることができます。私たちは変化を受け入れ、未来への道を切り開く責任を果たし、DXの利点を最大限に活用しましょう。
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