かなりあおり気味のタイトルですよね。しかし、最近、パソコンの価格は値上がりを続けています。
この数年のAIブームのニュースはテレビで度々、目にされることが多いと思います。AI関連の株価が上昇し、好調な日経平均指数を引っ張り続けています。しかし、AIブームのあおりを受けて静かにメモリ半導体の価格が急上昇していることはをご存知でしょうか。そしてその余波が、皆様の会社の経費、具体的には「パソコンの導入コスト」を劇的に押し上げようとしています。
結論から申し上げると、「パソコンの買い替えを予定されているなら、すぐにでも実行することが得策です。
単なるセールストークではありません。市場データが示す、構造的な「価格高騰の不可避な未来」がそこにあるからです。本コラムでは、AIブームが引き起こした「メモリ不足」の実態と、それが経営に与えるインパクトについて解説します。
1. 「待てば安くなる」時代の終焉
長年、パソコンやIT機器の導入において、皆様の頭の片隅には「デジタル製品は時間が経てば性能が上がり、価格は下がる」という常識があったのではないでしょうか。しかし、半導体市場のプロフェッショナルたちは、その常識はもはや崩壊したと口を揃えます。
特に2025年後半から現在にかけて、パソコンの主要部品である「メモリ(DRAM)」と「ストレージ(SSD)」の価格が異常なペースで上昇しています。
秋葉原の市場データによると、2025年9月から11月のわずか2ヶ月間で、最新規格のDDR5メモリの価格が2倍から3倍に急騰しました。例えば、大容量モデル(48GB×2枚組)の価格は、10月から11月にかけて一気に1万7000円以上も跳ね上がっています。
これまでであれば、こうした高騰は一時的な需給バランスの乱れとして片付けられました。しかし今回の値上がりは、構造的な要因によるものであり、「2026年以降も高止まりが続く」ことがほぼ確実視されています。つまり、「もう少し待てば安くなるだろう」という判断は、逆にコスト増を招く機会損失になりかねません。
2. AIデータセンターが「メモリ」を食い尽くす
なぜ、これほどまでに価格が上がっているのでしょうか。その主犯こそが、昨今の「生成AIブーム」です。
ChatGPTをはじめとする生成AIは、膨大なデータを処理するために巨大なデータセンターを必要とします。このAIデータセンターには、NVIDIA製のGPU(画像処理半導体)などが大量に導入されていますが、GPUだけではAIは動きません。高速かつ大容量の「メモリ」が不可欠なのです。
”優先される「HBM」と、後回しにされる「パソコン」”
ここで問題となるのが、半導体メーカーの戦略転換です。
Samsung、SK Hynix、Micronといった世界的なメモリ大手3社は今、AIサーバー向けの超高性能メモリ「HBM(広帯域メモリ)」の生産に全力を注いでいます。HBMは、従来のパソコン用メモリと同じシリコンウェハー(基板)から作られますが、より高い技術と生産能力を必要とします。そして何より、AI企業は高くてもHBMを買ってくれるため、メーカーにとっては利益率が圧倒的に高い「ドル箱」なのです。
その結果、何が起きているか。メーカー各社は、利益の薄いパソコン向けの汎用メモリ(DDR4やDDR5)の生産ラインを縮小し、生産能力をHBMへ振り向けてしまいました。
OpenAI社などがサムスンやSK Hynixと月間最大90万枚という桁外れのウェハー供給契約を結んだとの情報もあり、これは世界のDRAM生産量の約4割に相当すると言われています。
つまり、世界の半導体工場のキャパシティはAIという「大食漢」によって占有され、我々中小企業が使うパソコン用のメモリは「後回し」にされているのです。供給が絞られれば、当然価格は上がります。これが、現在のパソコン価格高騰のカラクリです。
3. 「Windows 10 サポート終了」という時限爆弾
価格高騰の要因はAIだけではありません。私たち日本の企業には、もう一つ避けられないタイムリミットもあります。「2025年10月のWindows 10サポート終了」です。
皆様の社内にも、まだWindows 10のパソコンが残っていないでしょうか。サポートが終了したOSを使い続けることは、セキュリティ上、会社玄関の鍵を開けっ放しにするのと同じです。サイバー攻撃の被害に遭えば、信用の失墜や損害賠償など、パソコンの購入費用とは比較にならない損失を被ることになります。
現在、このOS更新に伴う法人向けの買い替え需要が急増しており、2025年度の国内パソコン出荷台数は過去最高を更新する勢いです。さらに、教育現場での「GIGAスクール構想」端末の更新時期も重なっています。
この「供給不足」と「需要過多」のダブルパンチが今まさに起きており、2026年度にはパソコン価格がさらに10%以上上昇するという予測も出ています。
4. 熊本の中小企業がとるべき「防衛策」
では、私たち中小企業はどう動くべきでしょうか。
答えはシンプルです。「必要な台数を、今のうちに確保する」ことです。
① スペックをケチらない(メモリは32GB以上を推奨)
「事務用だから安いモデルでいい」という考えにはリスクがあります。AI機能が搭載された最新のOSやソフトウェアは、以前よりも多くのメモリを消費します。かつては8GBや16GBで十分と言われましたが、これからは32GBがスタンダードになる可能性があります。
メモリ不足のパソコンは動作が遅く、社員の生産性を著しく低下させます。「人件費」という最も高いコストを無駄にしないためにも、十分なスペックのマシンを選ぶほうが無難です。
② リース・導入計画の前倒し
もし来期以降に導入を予定しているならば、今期中の前倒し購入をお勧めします。価格上昇のトレンドは数ヶ月単位で加速しており、1週間で10〜20%値上がりするケースも報告されています。決算対策としてだけでなく、将来のコスト増を回避する「防衛的な投資」として捉えてください。
③ セキュリティ対策としての「最新機種」
古いパソコンを使い続けるリスクは、故障だけではありません。最新の「AI PC」やWindows 11搭載機は、ハードウェアレベルでセキュリティ機能が強化されています。ランサムウェアなどのサイバー攻撃から会社を守るためにも、ハードウェアの刷新は最も効果的な投資の一つです。
<結び>
熊本は今、半導体産業の中心地として活況を呈していますが、皮肉なことに、その半導体そのものの世界的な奪い合いにより、地元の企業活動に必要なIT機器の調達コストが上がっています。
しかし、これを単なるコスト増と嘆くのではなく、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を一気に進める好機」と捉え直してみてはいかがでしょうか。
AIを活用できる最新の高性能パソコンを導入することは、業務効率を上げ、社員の働き方改革を進め、ひいては企業の競争力を高めることに直結します。
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