10年前にはなかった「防災」とAI―熊本地震から考える、AIは災害にどこまで役立つのか

令和8年熊本地震から、ちょうど1か月。

「もう10年になるね」

そんな話を家族としていたところでした。

10年前の熊本地震では、自宅の壁にヒビが入り、車がブロック塀で潰れる被害も経験しました。今回は少し場所が違ったこともあり、ありがたいことに家にも家族にも大きな被害はありませんでした。

でも、10年前の経験が無駄になっていたわけではありません。棚は固定し、非常用リュックや水も準備していました。

10年前の経験が、10年後の備えにつながっていたのです。

10年前、もう一つ強く印象に残ったこと

それは「情報」でした。

2016年の熊本地震では、「熊本市動植物園からライオンが逃げた」というデマがSNSで広がりました。災害時は誰もが不安になります。そんなとき、「○○で大変なことになっている」という情報を、確認する前に信じてしまうこともあります。

一方で災害時には、

「どこに避難すればいいのか」
「どの道路が通れるのか」
「どの避難所に何が足りないのか」
「どこに物資を届ければいいのか」

といった正確な情報が欠かせません。

10年前の熊本地震では、県外から届いた支援物資が必要な場所にうまく届かないという問題もありました。

つまり災害では、「物」だけでなく、正しい情報を、必要な人に、必要なタイミングで届けることも重要なのです。

では、10年後の今ならどうなるのか?

2016年には、今ほどAIは身近ではなく、ChatGPTのような生成AIもありませんでした。

令和8年の熊本地震では、デジタル庁が被災自治体などに生成AI「ガバメントAI 源内」を緊急提供したそうです。災害関連資料の要約、情報整理、Web調査、文書作成、翻訳、データ整理などをAIで支援するものです。10年前にはなかったAIが、実際の災害対応に使われ始めている。これは大きな変化だと感じました。

AIは地震に何ができるのか?

地震直後には、自治体の発表、SNS、道路情報、避難所の状況、停電・断水、被害写真や動画など、大量の情報が発生します。これらを人間だけですべて確認するには限界があります。

そこでAIに情報を集め、分類・要約させ、

「どこで何が起きているのか」
「どの情報が確認済みなのか」
「どの情報を人間が確認する必要があるのか」

を整理する。これだけでも、災害対応は大きく変わる可能性があります。

AIはデマを防げるのか?

ここは少し難しいところです。

AIだからといって、デマを100%見破れるわけではありません。SNSで同じ情報が100件あっても、最初の1件の間違いを残り99件がコピーしているだけかもしれません。

「情報が多い=正しい」ではないのです。

だからAIには、単純に「デマかどうか」を判断させるのではなく、

「公式発表で確認されている」
「SNSでは広がっているが、公式確認はない」
「複数の情報源で一致している」

といった形で、判断材料を整理してもらうことが重要だと思います。

AIが判断するのではなく、人間が正しい判断をするためにAIを使う。

この考え方が、災害時には大切なのではないでしょうか。

AIは「人間の代わり」ではなく「人間を助ける」

避難所の状況整理、必要物資の把握、道路被害の確認、被害画像の分析、外国人向け翻訳など、AIが役立つ場面は多くあります。

ただし、最後に判断するのは人間です。

消防、警察、自治体、医療、物流、地域の人たちにAIが加わり、人間では処理しきれない大量の情報を整理する。そんな「人間+AI」の防災が、これからの形になるのかもしれません。

「情報への備え」も、防災の一つなのではないか。

AIは地震を止めることも、正確に予知することもできません。でも、地震の後に生まれる膨大な情報を整理し、人間の判断を助けることはできます。

AIが、今起きている気象災害やこれから起こる災害にどこまで役立てるのか。

それは、これから私たち自身が考えていくテーマなのだと思います。

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