最近、よくみかけるM&AのDM
今回はDXの話ではなく、最近、よく見かけるようになったこの話題。
この1~2年、会社にM&Aに関するDMやメール、電話が頻繁にくるようになったと感じます。皆様もM&A仲介という会社から、「貴社に関心を持っている大手企業(または上場企業)があります」というような連絡がきた経験はございませんか?
弊社にきたDMには、「弊社のクライアント企業が貴社のIT事業を拡大するため、M&Aによる譲り受けを大変強く希望しています」という内容のDMが、上場しているM&A会社から届きました。
そこには、「ご関心の有無を〇月〇日までにFAXやメールで返信ください」と妙に期限を区切って返信を促す文言が書いてあります。
「ご相談は無料で承っております」とも書いてあるし、「大手企業がうちの会社に興味を持っているなら」と、ちょっと心も動きます。
しかし、美味しい話には注意がつきもの。自分の会社に興味を持っている会社が実際に存在するのかどうかは、実は眉唾なことが多いのです。
M&Aの業界では売り手企業を囲い込むことが最重要ミッションなので、M&A仲介会社の営業マンが魅力的な誘い文句で「釣ってくる」ことが多いのだそうです。また、いくら断ってもしつこく電話をかけてくることが後を絶たないのだとか。
このため、行政(中小企業庁)からM&A会社に対して不適切な営業行為(本当は具体的に買いたい会社がいないのにあたかも存在するかのような営業トークで契約締結を迫ってくる)についてやめるよう注意喚起されているようです。
M&A仲介会社と契約を結ぶ時の注意点
知り合いのM&AコンサルタントにM&A業界のことを聞く機会がありました。
世の中には不動産仲介や人材紹介会社など様々なマッチングビジネスがありますが、M&A業界には不動産取引のような法律による規制や許認可がないのだとか。
このため、近年、M&A業界に参入する事業者が相次ぎ、トラブルになっていること多いそうです。 M&Aが成功した場合の報酬額は大きく、仲介会社の担当者の年収も高いことから、とにかく契約を急がせたり、着手金をとられた後は連絡が取りづらくなったりと営業活動に問題がある場合もあるそうです。
M&Aの成功報酬額が大きいということは、会社オーナーにとっても支払う額が多いということでもあります。上場企業のM&A仲介会社や金融機関の場合、最低でも支払わなければいけない金額は2000万円。さらに成功報酬額の計算式も様々で、M&Aの会社が大手であればあるほどがっぽり取られます。
さらに、M&Aについて誰かに相談しようとも、M&A会社が“秘密保持契約”を振りかざして誰にも相談するなと迫ってきて、M&A会社のペースで物事が進んでいくことが見受けられるそうです。
M&Aなんて一生に一度あるかないかの経験だから何でも専門家(M&A会社)の担当者にお任せしがちだけれど、実は口車に乗せられているだけかもしれません。
M&Aコンサルタントのお勧めは、契約ごとに関して内容を理解するためにも弁護士に相談すること。地元には法テラスという弁護士による法律相談所がありますし、知り合いに紹介してもらえる弁護士に頼ってもいいと思います。M&Aで支払わされる金額に比べれば、弁護士への相談料なんてたかが知れています。
M&A会社による秘密保持契約の制限は、弁護士や会計士など専門家を除外することになっているし、取引している金融機関に相談するのもよいと思います。
また、各県には事業承継・引継ぎ支援センターという公的機関があり、たいていは商工会議所のなかにあるのですが、M&Aに関する相談を無料で受けてくれます。
M&Aの買い手には乗っ取り屋もいる!
最近、新聞やテレビニュースで話題になっているのは「吸血型M&A」というワード。
いわゆる企業乗っ取り屋です。会社を買い取った後は、現金・預金を吸い取り、不動産を売却して資金化し、銀行借入金を増やし、と好き放題です。
さらに、会社の元社長の連帯保証を外してくれず、会社を譲り渡した後に多額の借金を背負わされたという悲惨な事件が起きています。
こちらは中小企業庁がだしている「M&Aに関するトラブルにご注意ください」というチラシです。↓
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_trouble.pdf
チラシには、
- 会社を譲り渡したあと、銀行借り入れの連帯保証を外してくれない、
- 株式の売却代金や退職金の支払いを約束通り支払ってくれなかった、
という問題事例があると記載されています。
こうした問題のある乗っ取り屋を、M&A仲介会社が紹介してくるというケースもあるとのことなので、M&Aの仲介会社も信頼できるわけではない気がします。
特にM&A仲介会社の担当者の年齢が若い場合は気を付けたほうがいいでしょう。社会人経験の浅い担当者は、買い手企業が乗っ取り屋と気づかないまま、「いい会社です」と紹介してくる場合があるからです。「買い手企業の素性は大丈夫か?どんな会社なのか?業績はどうなっているのか?」を担当者に聞く権利はあるわけで、納得できるような回答が返ってこないようなら、その話を見送りすればよいだけです。
これまで築き上げた事業を変な会社に勝手にされて、残された社員や取引先に迷惑をかけてしまう、といのが最も残念な結果です。
「高い会社で事業を買ってくれる」「上場企業が興味を持っている」という甘い言葉にはくれぐれもご用心ください。