1.家庭菜園を始めてみました!
2020年のコロナ禍で趣味の旅行もできず、自粛自粛でお家時間が増えた時期、JAさんから共同農園を借りて、家庭菜園を始めました。現在も続けているので5年間ほど野菜の栽培と収穫を続けています。夫婦二人での共同作業であくまで趣味的なものですが、素人な私たちでもJAさんが苗・肥料・作業道具一式を用意してくださるので、誰でも簡単に始められることができ、農園を見渡すと親子や家族で楽しむ方たちばかりです。
それなりに費用がかかり、スーパーで野菜を購入したほうが安上がりなのは事実です。しかし、野菜の育て方を勉強したり、たくさん収穫した野菜を消費するためにいろんな料理法を習得したりで世界が拡がる楽しさがあります。また、何より農家の方たちが日々、苦労されていることを実感でき、食べ物への感謝が大事であることを痛感します。
最初の共同農園をお借りしたときは、できるだけ農薬や肥料を使わない方針の農園だったので、青虫を見つけ次第、退治するのですが、白菜や小松菜など葉物類はびっくりするほど虫食いだらけ。大根にもアブラムシがびっしり発生するなどで「農薬ってすごいんだな」と感心しました。スーパーには決して並べられない出来で、いわゆるB品ばかり生産していましたが、売り物にするわけでもなく、見た目より美味しさであまり気にすることもありませんでした。
次に、より自宅に近い共同農園をお借りすることとなり、その2番目の共同農園では農薬と肥料をしっかり使う方針でした。すると、農薬の効果はてきめんで、病虫害が見違えるほど少なくなり、また肥料の効果も抜群で収量がびっくりするくらい増えました。スーパーに並ぶ野菜類はきれいなものばかりなので、農業は適切な量の農薬と肥料を使うことで成立するお仕事なのだと実感しています。学校で習った三大肥料が植物の成長を促す効果について、実際に植物を育ててみることで実体験することは良い機会でした。
2.肥料価格が上昇している!
アメリカ・イラン紛争の影響で肥料価格が上昇しているニュースを3月以降、たびたび目にすることがあります。ガソリン価格が上がるのはわかりますが、肥料価格が上がるのはわかりにくいですよね。といっても、JAさんで用意してくださる農薬と肥料は実際に自分で購入するわけではありませんのであまり実感がわかない話ではありますけども。
そこで肥料原料の国際価格を調べてみると、下記のグラフ(出典:農林水産省)のとおり、今年2月末のアメリカ・イラン紛争が始まった直後から窒素系肥料原料(尿素)とリン系肥料原料(りん安)の価格が爆上がりしています。
2022年はカリウム系肥料原料も含めてすべて爆上がりしていますが、こちらはロシア・ウクライナ紛争が原因です。世界のカリ肥料の生産をロシアとベラルーシが占めていたためカリ肥料の価格があがり、またロシアからヨーロッパに供給されていた天然ガスの供給が削減されたことでヨーロッパの肥料工場が大打撃を受け、窒素肥料の価格も高騰しました。
今年の価格上昇は2022年よりまだマシのようには見えますが、下記グラフの国際価格はドル建てです。日本の場合、現在の為替水準(1ドル160円前後)を考慮すると2022年(1ドル130円前後)当時のダメージとあまり違いはないのかもしれません。

【出典】農林水産省(2026年5月現在)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/fertilizer_price.html
3.肥料価格が上昇するメカニズム
中東が肥料の供給基地というイメージはあまりなかったと思いますが、肥料の原料は石油と天然ガスを生産するときに生じる副生成物由来のもので占められてるそうです。
植物を育てるための三大栄養素である窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)は、そのままで肥料として使用するわけではなく、植物が吸収しやすい形にする必要があります。窒素肥料の場合は尿素肥料(CO(NH2)2)や硫安(硫酸アンモニウム・(NH4)2SO4)などの形で使用され、その主成分はアンモニアです。窒素は大気中の約78%を占めるごくありふれた分子ではありますが、化学的に極めて安定しています。アンモニアを大量かつ安価に作成するためには空気中の窒素と水素を高温・高圧化で反応させる「ハーバー・ボッシュ法」が用いられます。その水素を大量・安価に生成するための原料が天然ガス(あるいは石炭)であり、アンモニアの供給源が必然的に中東地域となるのです。
硫安の原料となる硫黄も石油を精製するときに産出される副生成物であり、ホルムズ海峡が閉鎖されると硫黄価格が上昇します。このように肥料原料の供給が細り、世界の肥料価格が上昇するというメカニズムになっているわけです。
肥料のみならず、ナフサを原料とする製品(ビニールハウス)や重油の価格上昇が日本の農業へ大きく影響を与えており、食品価格の上昇は避けられないとみています。
日本は二次産業(製造業)のみならず、一次産業もグローバルサプライチェーンに組み込まれており、肥料や農薬なしには農業生産は成立しません。食料安全保障の観点からすると、食糧のみならず、農業資材も国内自給率を改善することが不可欠なのだな、と考えさせられます。
