「中小企業にとってのDXの始め方」でコラムを書いてきましたが、今回は「中小企業におけるWEBの活用」についてお話したいと思います。
1.WEB広告の活用
およそ10年前、某地方の小さな生コンクリート工場から新規事業を手伝ってほしいという相談を受けました。本業の生コン製造は、公共事業の動向によって左右されているものの、まあまあ安定しています。ただ、その生コンクリート工場の経営者には公共事業に依存しているだけでは先細りしていくという危機感があって、本業に関連する新製品を開発・販売したいということでした。
新規事業を立ち上げ、成功させることは容易ではありません。どんなにいい製品をつくったとしても、売れなければ事業が続きません。さらには、どんなにいい製品であっても世の中に知られなければ売れることがないからです。
大手企業であれば新規事業を宣伝する資金が潤沢であり、テレビ広告など多額の広告費をかけることができます。しかし、資金に限りがある中小企業は広告によって新事業や新製品を世の中に知らしめることは容易ではありません。
そこで、中小企業にとって強い味方となるのはWEB広告です。それほど多額な金額を使わなくても集客をすることが可能です。しかも、テレビ広告や新聞広告などと違って一人当たりの集客費用を計算することができますので、広告効果の測定ができるのも魅力の一つです。WEB広告には大まかにわけて次の2つの手法があります。
①ディスプレイ広告
ニュースサイトやブログなどWEBサイトの一部に表示される広告。男性・女性や地域などを絞り込み、新商品の見込み顧客となりそうな人に見られることができる。商品名や会社名を知ってもらう認知活動に向いている。
②リスティング広告
GoogleやYahooなど検索サイトで知りたいことを検索するときに、検索結果の上部や下部に表示される広告。新製品のターゲットとなる顧客にリーチしやすく、集客のための販売促進活動に向いている。
こうしたWEB広告を自社でやれないこともないですが、デザイン力や広告キーワードなどノウハウが求められるため、WEB広告を得意とする専門の会社に依頼するのが一般的です。月間15万円くらいの広告費用はかかりますが、インターネットでの通信販売を行う場合は、集客するための必要経費となります。
2.記事を書き続けることで集客する方法
広告に費用をかけなくても、自社でWEB集客する方法もあります。自社のWEBサイトにニュースやコラムなど記事を記載することにより、自社のWEBサイトをGoogle検索表示結果の上位に持ってくるSEO(Search Engine Optimization)という手法です。
リスティング広告を利用しなくても自社の記事(コンテンツ)を検索結果で上位表示させることで自社をPRすることができるのです。Googleなど検索エンジンツールは、常にWEB上にある記事・コンテンツを読み取り、検索エンジンを利用する人に役立つ記事を上位に表示するプログラムを動かしています。すなわち、自社の製品や事業に関連する内容の記事やブログを自社サイトに書き続けることで、自然に自社に関心を持つ人を集めることができるのです。
このコラムの冒頭でお話した生コンクリート工場の経営者は、新製品をPRするためにまずはSEOにより集客することを決めました。すなわち、コンクリートや建築資材に関するブログを毎日3本、経営者自身が書き続ける、ということを実行することにしたのです。
この決断を聞いたとき、私は正直なところ疑問に思いました。
「ファッションや車など消費者向け商品について知りたいという人はたくさんいるが、コンクリートや建築資材など一般人になじみの薄い商材や情報をブログに書いても誰も見ないんじゃないか?」
私だけではなく、そう思う人は多いのではないでしょうか? しかし、まずは実行してみないと結果はでないので「毎日ブログ3本書く」ということを応援しました。
それから、その経営者はコンクリートや外構工事に関する情報をひたすら毎日3本書き続けることになります。1日も休まず365日×3本で年間約1,000本の記事を書くことになります。最初の1年間はWEBサイトのページビュー数(WEBサイトを閲覧される数:PV数)は目立って増えませんでしたが、それでもくじけることなく彼はブログを書き続けました。2年経過したあたりでGoogle検索にブログの表示が目立つようになり、PV数は増加を始めます。3年経過したころ、生コンクリート工場のWEBサイトのPV数は3万を超えるようになり、新規問い合わせの件数や新規成約数はどんどん増えていきました。
ブログを書き続けて5年経過すると、同社のWEBサイトは10万PV数を超えるようになり、新規事業の売り上げは数億円を超えたのです。新規の問い合わせは、工事業者や同業の生コンクリート工場だけではなく、一般企業や一般個人などいわゆるエンドユーザーからも多くありました。世の中には私が想像する以上にWEBの力を活用することで小さくてもたくさんのニーズを集めることができる、ということを実感しました。
3.どんな業種・業態でもSEOは効果がある
同社は実際にはリスティング広告も利用したのですが、SEOのほうが集客効果は高かったので、現在もブログ記事を作成し続けています。毎日、3本のブログを書き続けることは、広告を利用するよりもはるかに労力がかかるものですが、あきらめずにやり抜くことで効果は表れる、ということを証明しています。
世の中にはいろいろな業種・業態があり、自社の事業はWEBで集客するなんて難しいと思いがちですが、どのような事業でもWEBを活用することで売り上げを伸ばすことができます。特に新規事業や新しい顧客・市場を開拓する場合など、中小企業にとってWEBはとても力強い味方になります。みなさんも売り上げを伸ばしたい、新しい事業を始めたい、というときはWEBをぜひご活用ください。
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