熊本の中小企業は、電子帳簿保存法にどう取り組めばいいの?
1.今さらですけれど、電子帳簿保存法ってなに
電子帳簿保存法は、企業が電子データで帳簿や証憑書類を保存することを認める法律です。
今年(2024年)1月に電子取引データの電子保存が義務化され、嫌でも向き合わざるを得なくなったのですが、実はこの法律、1998年に施行されていて、意外と昔からあった制度です。
税務署や税理士からなんでも紙(請求書やら領収書やら)を保存しろと言われ、キャビネットや段ボールに膨大な資料がほこりを被ったまま保管(7~10年保存の義務)され、整理整頓がなにかと面倒なものです。
その紙保存から解放してくれるはずの電子帳簿保存法は、当初、電子データの保存に関する厳しい要件が定められていました。例えば、帳簿や証憑書類を電子化する際には、一定のシステムを導入し、データの真正性や可読性を確保するための厳格な管理が求められました。このため、コストや技術面でのハードルが高く、中小企業が導入するには困難が伴いました。中小企業にとって「電子化なんて無理!」と思わせるもので、「電子化なんてウチには関係ない」という経営者・経理担当の方が大半だったと思います。
2015年の法改正により、要件が大幅に緩和され、電子データ保存のハードルが下がりました。特に、電子取引データの保存が容易になり(電子署名が不要となる)、領収書や請求書などを紙で保存する必要がなくなりました。
さらに、2016年、2019年、2020年、2021年と立て続けに要件緩和がされています。とはいえ、中小企業にとってはまだまだ保管プロセスの面倒さやコスト負担は残っており、電子保存を導入している企業は多くはありませんでした。
ところが、今年2024年1月1日から電子取引データの保存が義務付けられ、否応なく中小企業も取り組まざるを得なくなっています(実際には2022年1月1日改正にて、電子取引データの保存が義務化されていましたが、2023年12月末までは紙での保存が認められる猶予期間が設けられていました)。
思い出せば2023年10月にインボイス(適格請求書)制度が強制スタートし、その対応でおおわらわなところに、電子取引の保存義務化と大きな制度変更が立て続けにやってきたのです。
2.電子取引データの保存義務化
電子取引データとは、電子メールで受け取った請求書や、オンラインで発行された領収書など、電子的にやり取りされた取引情報を指します。
最近、「請求書をデータ(たいていはPDF形式)で送っていいですか?」「メールで請求書をダウンロードしてください」といった取引先からのリクエストが目立ちますよね。クレジットカードの取引明細、電話代の請求書も当たり前のように電子化されています。逆に、紙で送ってもらうと余計なコストを支払わなければなりません。紙ベースの郵送だと、紙代や封筒代・印刷代・切手代などあらゆるコストが発生しますので、「紙」にはコストがつきものですから、しょうがないこととも言えます。
これまでは、電子化された請求書類はプリンターで印刷してファイルに保存する、というやり方でしたが、これら電子取引データを紙で保管せず、データのままパソコンやクラウドに保管せよ、というのが今回の義務化の内容です。
このデータ保存方法には、次の3つのルールがあります。
ルール1:ディスプレイ・プリンターを備え付けること
ルール2:改ざんを防止すること
ルール3:検索できること
電子メールで請求書を受け取る以上、「ルール1 ディスプレイ・プリンターを備え付けること」はクリアできているはずです。「ルール3 検索できること」は、税務調査時にすぐに検索して、税務調査員に即座に見せることができること、となります。
それでは、「ルール2 改ざんを防止すること」はどうすればいいか?
国税庁は、次の方法から1つ以上当てはめればよいとしています。
①タイムスタンプ付与
②訂正・削除履歴が残るシステムを使用すること
③改ざん防止事務処理規定を制定し、備え付け、遵守すること
しかし、①タイムスタンプ付与、②訂正・削除履歴が残るシステムは、いずれも外部のサービスを利用しなければならず、コストが毎月かかります。
インフレによる物価の上昇、すなわち仕入原価や材料原価、ガソリン代などコストが上がり続けるなか、中小企業にとって事務コストは極力抑えたいもの。
どう対応すればいいのか、顧問の税理士に尋ねてみましたが、意外と電子帳簿保存法に詳しくなく、それなら自分で調べるほかありませんので、調べることとしました。
3.熊本の中小企業が取るべき対応方法
電子取引データの保存は、高いコストを払って都会の会社のシステムを利用する必要はありません。とはいえ、コストゼロというわけにもいきません。そもそも紙で保存していた時も、プリントアウトやファイル代などコストは発生しています。
熊本の中小企業が取るべき対応方法としては、「ルール2 改ざんを防止すること」と「ルール3 検索できること」の要件をどう満たすかということです。
「ルール3 検索できること」への対応は、
①ファイル名に「日付」+「取引先」+「金額」の組み合わせでネーミングすること
②エクセルなどで取引データの索引簿を作ること
のいずれかの対応でよいのです。
ちなみに、熊本コンピュータソフトでは、①ファイル名に「日付」+「取引先」+「金額」 でネーミングして保管しています。
検索機能については、
①取引などの「日付・金額・取引先」で検索ができる
②日付・金額について範囲を指定して検索ができる
③日付と金額と取引先を組み合わせてAND検索ができる
という要件はありますが、Googleクラウドの検索機能やフォルダ整理で何とかしのげます。
「ルール2 改ざんを防止すること」については、システム導入が不要です。「③改ざん防止事務処理規定を制定し、備え付け、遵守すること」で対応できます。
なお、『改ざん防止事務処理規定』は、国税庁のWEBサイトから書式(電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程)をダウンロードして、自社用に書き換えることで事足ります。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
このように、最小限のコストで電子取引データの電子保存は対応できるものの、
☞ データを入れていたパソコンが壊れた!
☞ 社内のパソコンがウィルスに感染した!
といった事故を想定して、クラウドデータ保管サービスやネットワークストレージ(NAS)を利用して、バックアップを常に取ることは必須です。二重化の備えあれば憂いなし!
ちなみに、当社ではクラウドデータ保管サービスのDropBoxを利用し、経理用PCの保管と二重化しています。NASを利用する場合でも、NAS自体の二重化とクラウドバックアップで対処すれば、まずは安心でしょう。
電子帳簿保存法への対応は、事業規模によって適正な方法があると思います。当社では、販売管理ソフトでの請求書電子化や電子取引データの保存に取り組んでおります。
電子帳簿保存法に関するルールにつきましては、より詳細なルールだったり、要件緩和のアップデートも多く、皆様の顧問税理士さんと日ごろからの相談が不可欠だと思います。
皆様の業務運用ルールや手順に沿ったうえで、実際のシステム運用でお困りごとがございましたら、当社までお気軽にご相談ください。