各産業の推移(日本経済レポート令和6年2月内閣府政策統括官(経済財政分析担当))
卸売業の就業者は減少の推移を表してる。
一方、人手不足感の分布図を見ると卸売・小売業に関しては人手は足りているまたは「過剰」という集計結果になっている。
しかし、倒産の動向を見ると卸売・小売業は他産業と変わらず件数は増えている傾向となっているのと同時に人手不足感では「人手不足である」と分布されているサービス業とシンクロして倒産件数は増えている。
考察
サービス業は、コロナ後の予想以上の倒産件数の増加に直面していますが、同時に人手不足にも悩まされています。この状況は、産業が成長期にあり、必要なリソースが追いついていないことを示唆しています。一方で、卸売・小売業は人手不足ではないことから、産業が衰退しており、成長が停滞している可能性があることが推察されます。このような背景は、サービス業の活性化と資源の適正配分、卸売・小売業の戦略的見直しを急ぐべき課題としています。
業界の特徴を考える
東京商工リサーチの調査によると
勤続年数について
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2021年の国内157万社の平均年齢(業歴)は34.1年だった。創業・設立から11年以上50年以下が約7割(構成比69.2%)を占め、100年超の企業は4,559社で、全体の0.29%と1,000社に3社の割合だった。
産業別は、最長が製造業の42.1年。次いで、卸売業39.6年,小売業38.4年の順で、情報通信業23.1年、サービス業他28.4年など新しい市場の産業は短く、最長と最短の差は19年だった。
”
産業の勤続年数が長いことは、しばしばその業界の安定性の指標とされます。経験豊富な労働力は、企業が長期にわたり堅実な運営を行う上で重要な役割を果たします。しかしながら、勤続年数の長さが示す別の側面に注目することが重要です。特に、卸売業のような産業においては、長い勤続年数が労働力の高齢化と直結し、それは業界の将来における潜在的なリスクを示唆しています。
労働力の高齢化は、産業の革新性と競争力の低下をもたらす可能性があります。これは、新しいアイディアや技術の採用を遅らせ、結果として市場でのポジションを弱めることに繋がるかもしれません。さらに、勤続年数が長いことは、新しいスキルや知識の獲得に対する抵抗があることの現れであるとも考えられます。高齢の労働者が多い業界は、退職という自然な人材の流動が生じた際に、そのギャップを埋めるための若手人材が不足している可能性があります。
課題解決を考える
こうした中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まっています。DXは単にテクノロジーの導入以上の意味を持ちます。それは新たなビジネスモデルへの転換、組織文化の変革、そして市場での競争優位を確保するための戦略的取り組みです。経営者の皆様には、この機会を利用して、企業内のデジタル化を推進し、新しい技術への適応を図ることで、業界内でのリーダーシップを確立し、未来への大胆な一歩を踏み出すことを強く推奨します。
経営者の積極的なリーダーシップなしに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入は事実上不可能です。デジタル技術を活用するためには、ただ技術を導入するだけでなく、企業文化や運営プロセスの根本的な変革が必要です。これを達成するためには、経営層が変化を先導し、全社を巻き込むことが不可欠です。
経営陣がこの変化をサポートし、リードすることで、従業員は新しい技術とプロセスへの適応を促され、組織全体が一丸となって効率的に動くことができるようになります。そのため、経営者はDXの重要性を理解し、積極的に関わることが絶対条件となるのです。
DXを推進するために
DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるための具体的な方法の一つとして、推進リーダーを設置することが非常に重要です。このリーダーは、デジタル化のプロジェクト全体を統括し、各部門の協力を得ながら技術の導入と運用を推進する役割を担います。
推進リーダーがいることで、以下のようなメリットがあります:
- ビジョンと戦略の統一:推進リーダーは組織全体のデジタル化に関するビジョンと戦略を明確にし、すべてのステークホルダーが同じ目標に向かって進むよう促します。
- コミュニケーションの改善:異なる部門間の情報の壁を取り除き、変革に関するコミュニケーションを一元化することで、誤解を防ぎ、効率的な意思決定を支援します。
- 障壁の克服:デジタル化に伴う技術的、文化的な障害を特定し、解決策を提案する責任を負います。推進リーダーは問題解決の専門家として、プロジェクトが滞りなく進行するようサポートします。
- リソースの最適配分:必要なリソースと予算の配分を管理し、最も効果的なデジタルツールと技術が適切なタイミングで導入されるようにします。
経営者が推進リーダーを設置することで、DXの取り組みが具体的な形で進行し、組織全体がデジタル化のメリットを最大限に享受できるようになります。このリーダーシップによって、変革はただの技術的な導入を超え、組織の持続的な成長とイノベーションを促進する力に変わるのです。
技術導入=DX化ではない
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、単に最新の技術を導入することだけを意味するわけではありません。DXの本質は、技術を活用してビジネスモデルを変革し、組織全体が市場の変化に迅速に対応できるようにすることにあります。これは、単に作業を楽にするためだけではなく、新しいビジネスの機会を創出し、事業を拡張するための手段です。
1. 変化に対応する力:
市場は常に変化しています。新しい競合が現れたり、消費者の需要が変わったりする中で、企業はこれらの変化に柔軟に対応する力が必要です。DXを進めることにより、企業は新しい技術を駆使してこれらの変化を捉え、迅速に行動を起こすことができます。
2. 社内への浸透:
技術の導入は、社員一人ひとりが新しいツールやシステムを理解し、活用することから始まります。したがって、DXの成功は従業員の参加と支持に大きく依存しています。経営層から現場の社員まで、全員がデジタルツールの使い方を学び、新しい方法での業務遂行を受け入れる必要があります。
3. データ分析によるビジネスモデルの改善:
DXの最終目標は、データを活用してビジネスモデル自体を改善することです。データ分析を通じて顧客の行動や市場のトレンドを理解し、それに基づいて製品やサービスを最適化することで、企業はより競争力のあるポジションを確立できます。これは、新しいビジネスの機会を見つけ出し、企業の成長を加速させるための鍵となります。
このように、DXはただの技術導入ではなく、企業が未来に向けて革新的で持続可能な成長を遂げるための戦略的な取り組みです。技術を利用して新しいビジネスモデルを創造し、市場における自社の立場を強化することが、DXの真の目的なのです。
海外水産業のDX事例紹介
カナダ西海岸で設立された「This Fish」
「This Fish」は、漁業と養殖業が手書きや属人的な古い慣習により技術革新に遅れていることを解決するために、オンラインで魚の起源を追跡できるプラットフォームを2010年に開発しました。このシステムはカナダから始まり、世界中に広がりました。
しかし、多くの地域で情報は依然として紙に手書きで記録されており、この古い方法がデータのデジタル化を妨げています。この会社のプラットフォームは、情報の正確な流れを確保し、新しい技術への移行を促進することを目指している。
特徴としては、漁業と養殖業のデジタル化を促進するために、AIを利用した歩留まり計算や一貫したハードウェアの導入を支援しています。これにより、生産効率の向上とコスト削減が可能になります。
具体的には、ラベルプリンターなどのデジタルツールを導入し、古い手書きの記録方法からの移行をサポートしています。このような取り組みにより、情報の正確性とアクセスの容易さが大幅に改善されている。