ハーフの息子と言葉のこと

うちの息子が、今年で4歳になった。  
母親が日本人で、僕がドイツ人なので、当然ながら息子はいわゆる“ハーフ”。
ただ、ハーフといっても「じゃあ、言葉はどっちなの?」って話になると、実はそんなに簡単じゃない。  
今回は、バイリンガル環境で子育てしてみて感じた面白いところを、少し書いてみようと思う。

ドイツ語と日本語、それぞれのスタート

息子が生まれたとき、僕たちはまだドイツに住んでいた。  
日本に引っ越してきたのは、息子が2歳と3か月くらいのとき。
つまり、最初の2年間は、周りはほとんどドイツ語の環境。  
ただし、母親である妻は、息子には必ず日本語で話していた。
僕(パパ)や祖父母、保育園の先生たち、そして他の子どもたちはドイツ語。  
ママだけが日本語。そういう環境で育った息子は、言葉に対してどういう感覚を持つようになるのか?
意外なことに、息子はちゃんと「日本語」と「ドイツ語」の違いを意識していた。  
…いや、正確には「ママ語」と「パパ語」って感じで区別してた。
たとえば、息子が「“ケーキ”ってドイツ語ではどう言うの?」と聞いてくる為には、  
「ママは“ケーキ”って言うけど、パパは何て言うの?」という感じで質問をして、親の言語で切り分けていた。
とはいえ、こんなふうに言葉が混ざる環境だと、大人でも時々ごっちゃになる。  
たとえば、日本語なら「散歩に行かないか?」で、ドイツ語なら「Wollen wir spazieren gehen?」。
でも、うっかり混ぜて「Wollen wir 散歩 machen?」って言ってしまったことがある。
すると、当時2歳の息子からまさかの指摘。  
「ちがう! ママは“散歩”って言う! パパは“spazieren gehen”でしょ!」
…まさか2歳の子どもに言語のミスを正されるとは思わなかった(笑)

そんな息子にも、子どもらしいユニークな言語ミスがある。  
日本語で「ママがいい」って言いたい時、ドイツ語で直訳しようとして  
「Mama ist gut!(ママは良い!)」って言うことがあった。
「ママのところに行きたい」って意味で言ってるんだけど、  
それじゃまるで“ママの評価が高い”みたいに聞こえる(笑)

日本に引っ越して、言語環境が逆転

そして、2歳のときに日本へ引っ越したことで、状況がガラッと変わった。  
今度は、周囲が全部日本語で、ドイツ語を話すのは僕(パパ)だけになった。
ドイツで育ったハーフの人たちと話すと、「もっと親が日本語を喋ってくれてたら…」みたいな話をよく聞く。  
だから僕は、日本に来ても息子にはドイツ語を話し続けると決めた。
実際そうしているけど、それでも2歳の頃と比べると、バイリンガル度は少し下がってしまった。  
理解はできるけど、自分でドイツ語を話すのは苦手になってきている。
難しい話になると、わざわざ日本語で説明してって頼んでくるくらい。  
「パパ、ロケットってどうやって宇宙に飛ぶの? 日本語で教えて!」
それでも4歳になった今では、「人にはいろんな言語があるんだ」っていう考え方が、少しずつ理解できるようになってきた。  
最近では「〇〇はドイツ語で何?」「英語では何て言うの?」と聞いてくることもある。
毎週テレビ電話でドイツの祖父母と話すとき、彼らが日本語を理解できないとわかっているから、  
頑張ってドイツ語で話そうとする姿も見られる。
保育園では英語のレッスンもちょっとずつ始まっていて、本人なりに「これは言葉を覚えるための時間だ」と理解しているのかもしれない。
だから僕も、これからもちゃんとドイツ語を使い続けるように気をつけていこうと思っている。

ところで、たった4年しか生きてないのに、もう20年くらい日本語を勉強してきた僕を超えた気がする(笑)。

アイキャッチ画像:Image by rawpixel.com on Freepik

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